〜漫画家を目指すキミに贈る〜『七つの大罪』鈴木央先生が説く ファンタジー漫画の極意!
【極意①】〝感覚的〟に読めるように心がけよう!
一見すると、ファンタジーは入りやすく感じるんですけど、いざ描こうとすると、実はとても難しいジャンルだと思います。
僕自身もそうでしたが、新人の頃はどうしても「俺の考えた設定を見てくれ!」となりがちなんですよね。
設定そのものが、作品の面白さだと勘違いしてしまっていたように思います。
「何千年前に、XX帝国の△△王が滅び、◯◯という武器が世界各地に散ってしまい……」みたいな。
そうです、そうです(笑)
ファンタジーの場合、1ページで世界観の説明を並べてしまいがちなんですが、『七つの大罪』ではオリジナル用語は極力出さないようにしています。
「王国」や「大罪人」など、普遍的な言葉は使用しますが、読者が知りたくなるまでは設定については多くは語らないように心がけています。
なぜオリジナル設定を出し過ぎるとよくないのでしょう?
例えば、家電を買ったとしても、説明書を全てしっかりと読むことってあまりないじゃないですか。説明書は読まないで、自分の感覚で使っていく人が多いと思います。
漫画も同じで、「この用語を覚えてね」から始めてしまうと、どうしても人を遠ざけてしまう。
感覚的に読めるようにして、余計な情報をいれないこと。これが大切だと思います。
【極意②】キャラは「リアルな一人の人間」であれ!
キャラを作るコツや、ポイントがあれば教えてください。
僕はまずはじめに「こんなキャラがいてほしいな」とか「こんなキャラがいたら楽しそうだな」と考え始めます。
そして、そのキャラが「どんな人間なのか」を自分の頭の中で明確に把握していく。
「明確に」と言いますと?
例えば、「冷静沈着」とか「熱血」とか「ドS」とか……これらの言葉一つを取ってみても、色々な種類の感情が含まれますよね。
リアルな人間って、こういった一言だけでカテゴライズできるものではないと思います。
例えば「ドS」な性格をしたキャラを作るとしたら、「それって、家に帰ってから親に対してもドSなの?」とか考えてみる。……恐らく、それでは人間関係は成り立ちませんよね。
だから、そこからさらに突き詰めて「誰に対してドSなのか、何でそのキャラはドSなのか」といった細かいことを考えていく。そうすると、ちゃんと「生きたキャラ」になっていきます。
架空の世界を描くファンタジーだと、キャラクターを作りづらいということはありませんか?
それはないですね。
例えば『七つの大罪』のキャラを使って、ファンタジー以外の世界観……例えばサッカーでも、野球でも、描けと言われれば描くことができますし。
「特定の世界観じゃないと成立しない」ということは、そもそもそのキャラが生きていない証拠だと思います。
ファンタジーを描きたい人こそ特に、「リアルな一人の人間」として、キャラを考えてみてください。
漫画家さんによっては、キャラ表(※キャラクターのデザインや設定、性格などを紙にまとめたもの)を作って、キャラクターを作り込む方もいらっしゃるようにお見受けします。
僕は基本的に、キャラ表は作りません。
キャラ表を作るよりも「リアルな一人の人間」として深く捉えた方が、矛盾は生まれにくいように思います。
例えば、編集者と展開について打ち合わせをするとします。
その時、頭の中でキャラを「リアルな一人の人間」として捉えられていると、その場で「話の展開としては面白いけど、このキャラはこういう行動は取らない性格だから、実際に取りそうな行動の中から面白いことを探そう」と、すぐに考えることができます。
【極意③】〝要素〟は絞りに絞るべし!
ーー漫画を作る順番としては「ストーリーより先にキャラから」になりますでしょうか?
はい。新人作家さんの中には「男の子がぶわっと泣く絵を描きたい!」とか、物語の枝葉から考える人も多いように思いますが、やっぱりキャラから作っていくべきだと思います。
キャラが固まっていないのに、ストーリーの枝葉だけを決め込んでしまうと、実はそこまで感情が盛り上がっていないのに、キャラが突然泣き出すシーンを描いてしまう。
そうなると、読者は「なんでいきなり泣いたんだろう……」と、ポカンとしてしまいます。
新人作家さんから「キャラを丁寧に描写すると、読み切りの適正ページ数に収めるのが大変だ」と相談を受けたことがあります。やりたいことを全部やろうとすると、ページ数が膨大になってしまう。それを減らそうとすると、今度は肝心のキャラの描写を削らざるを得ない。結果的に、まとまっているけれど読むとあまり面白くなくなってしまうとのことで……。何か対策はありますか?
要素が絞り切れていないんだと思います。
一見すると「このキャラしかいないの?」「このエピソードしかないの?」と不安になるくらいまで、要素を絞っていくことをお勧めします。
その上で、ストーリーを膨らませられたなら、そのキャラクターは「生きている」ということになる。
イベントを用意してあげないと動いてくれないキャラは、そもそもキャラが弱いのかもしれませんね。
結局、エピソードを詰め込みすぎても、ただの出来事の羅列になってしまいますし、そこは本当にシンプルに読み切りは「キャラクターを見せるた めだけのもの」として考えた方がいいと思います。
なるほど!読み切りの適正な構成が理解できました。
……とはいえ、小手先の事を考えすぎて、読者の予想通りの展開になってしまうのもよくありません。
「読み切りはこういう構成であるべき」と、頭でっかちに考えすぎないように。
「まとまってはいるけれど印象に残らない」というのが漫画としては一番よくないので。
「めちゃくちゃな話だけど、インパクトはあった!」という方が、好ましいと思います。
最初は下手で当然なので、「読み切りはこういう構成であるべき」という考えは、頭から追い出した方がいいかもしれませんね。個性をぶつけてきてほしいです。
最後に、審査委員長の立場として、「こういう漫画が読みたい!」というメッセージがあればゼヒ!
作者の個性が伝わってくる作品が読みたいですね。
ガタガタでもいい。下手でもいい。
とにかく、自分の「好き」をそのまま原稿用紙に叩きつけたような、インパクトのある漫画を待っています!
ガツガツきてほしいです!!
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鈴木央先生は、これまで様々なジャンルの作品を発表されてきていますが、「ファンタジー」というジャンルならではの難しさや、気を付けているポイントがあれば教てください。